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ラジオ版「New門」

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2020年08月18日放送

小松左京氏

コロナも震災も「予言作」の秘密

読売新聞 7月16日掲載

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ラジオ版New門 (文字起こしバージョン)

「この門を開けばニュースの世界がよりくっきり見えてくる」ラジオ版NEW門 ニュースの門です。今回のテーマは「小松左京氏」です。NEW門先月16日掲載の『コロナも震災も「予言作」の秘密』についてピックアップしてお伝えします。

はい。「予言作」って気になるタイトルですね。

そうでしょ? 過去には阪神淡路大震災とか、東日本大震災、アメリカのトランプ大統領の登場、そして今年は新型コロナウイルス蔓延。衝撃的な出来事があると、「予言作」としてしばしば注目されるのが、40年以上前に書かれたSF作家・小松左京さんの小説なんです。

はい。

今回は、その千里眼の秘密に迫ります。

まずはこちらの一説をお聞きください。

〈(まるで戦争だ……)医師はぼんやりした顔で考える。患者や付添(つきそ)いや、右往左往する医師でごったがえす廊下のわきには、長椅子や車付き寝台にぐったりした患者がねかされている>

これはパンデミック 感染症の大流行と人類滅亡の危機を描いた1964年のSF小説

はい。

「復活の日」の一説なんですが、

うーん。

これ今読むと、コロナ禍を思わずにいられませんよね。

そうですねー。確かにそうも聞こえますよね。

この小説は「チベットかぜ」と呼ばれた感染症が、国際的な防疫体制をマヒさせて、主要国首脳の感染や医療崩壊、株価暴落を招くというストーリーで

はい。

この発端となる物質「MM‐88」が英軍事施設から流出する設定も、新型コロナウイルスが中国・武漢の研究所から拡散したというアメリカの主張に似ていて驚きます。

はい。今のコロナ禍と重なる部分が多そうですね。

そうなんです。これ、出版当時、小松は33歳だったんですが、執筆のきっかけは、ロンドンでのペスト発生を伝える英字新聞の記事だったと、著書「小松左京自伝」に書かれています。

はい。

海外旅行の経験はなかったそうなんですけれど

はい。

東西冷戦下の国際情勢やウイルスの特性を描くのに、図書館で海外の文献や論文をひたすら書き写したそうです。

そうなんですねー。努力あってのそのリアリティというわけなんですね。

そのようなんですね。ストーリーで、増殖する病原体を宇宙由来としたのも、リアリティーを追求のためだそうで

はい。

感染拡大が進むと人間が「集団免疫」を獲得して新規感染者が減ると知って、「これじゃ皆殺しにならんぞ」と自ら創り出したそうです。

うーん(-o-;)

ほかにも1973年に刊行されてベストセラーとなった「日本沈没」は、

はい。

人々を襲う地震や津波、火災が生々しく描かれて、あの阪神、東日本の大震災後にも脚光を浴びました。

はい。

さらに、1978年の短編集「アメリカの壁」では「輝けるブライトアメリカ」を掲げたアメリカ大統領が誕生して、北米には巨大な霧の壁が出現するというストーリーが

はい。

「偉大な(グレート)アメリカ」を訴えたトランプ大統領が、メキシコとの国境に「壁」の建設を進める状況と、確かにそっくりです。

うーん。どれも今より40年以上も前に書かれた作品なのに、この近年の状況とそっくりでまるで予言みたいですよね。

そういう見方ができるわけなんですねー。

はーい。(-ω- )

この背景には、小松さんがあらゆる専門知識を動員して壮大な想定実験(シミュレーション)を繰り返して、人類や国家の動揺を描き出すということを目指したこともあるようなんです。

はい。

先月刊行された新書「いまこそ『小松左京』を読み直す」の著者で評論家の宮崎哲弥さん(57)は、「世界全体の問題をあぶり出すために破局を設定したが

はい。

細部まで細かい部分まで精密に描き込んだ結果、現実の危機と重なった。それが予言に見えるのだろうと語っています。

確かに、この破局をリアルに描いた分、あまりに現実とそっくりだと、予言だと言われそうですよね。

そうですね。さらに小松さんの作品の原点には戦争の体験もあるようなんです。

はーい。

旧制中学時代に、神戸の軍需工場で働いて空襲を何度も逃れたそうで

はい。

科学の負の側面を知るからこそ、「『歴史のif』を書けるのはSF」だと考え、作品で人類に理性と自戒を求めたそうなんです。

強いメッセージが込められてそうですね。

そうなんです。小松さんは実社会でも「人類の進歩と調和」を掲げた70年大阪万博の理念作りを主導するなど、

はい

人類の未来像を提言し続けました。
次男の小松実盛さん(56)は「父のSFは社会への警鐘。書き続けなければ生きていけない、ぐらいの気概を感じた」と振り返っています。

はい。

改めて、SF小説「復活の日」の後半に登場する文明史家のセリフを見ると

 〈全人類の共同戦線をはれるような体制を準備していたとしたら――災厄に対する闘いもまた、ちがった形をとったのではないでしょうか?〉。

というセリフがありまして、これね、コロナ禍と向き合う我々の胸にも迫るものがあります。

はい。(*-ω-)

新型コロナの第2波、第3波に備えよという、小松さんからのメッセージとも、とらえたいものです。

なんだかこれから起きることも見透かされているみたいな感じがしますね。

うーん。この想像力の逞しさのようなものを感じますよねー。

はーい。

ところで、科学的な空想、Science Fictionの本格的なSF小説は、19世紀のヨーロッパで生まれましたけれども、後世の科学が空想の世界を追いかけた例というのも少なくないんです。

はい。

例えば、「SFの父」と呼ばれるフランスのジュール・ベルヌが1865年に発表した「月世界旅行」は、人を乗せた砲弾の発射位置とか飛行時間が

うーん。

1969年に月面着陸したアポロ11号と類似していまして、

はい!∑(゚ω゚ノ)ノ

後に「予言」と評されているんです。

すごいですねー! SFの世界に現実の世界が追いついていったわけですねー。

そうなんです。これ現代と重ねて読める内容の作品というのは他にも多くあるんですね。

はーい。

改めてSF小説からくみとれるメッセージというものに注目してみてもおもしろそうですね。

そうですね。お話の中でこの小松左京さんは、リアリティを出すために図書館で文献だったり論文をひたすら書き写したというお話もさきほどありましたけれども、

はい。

そうやって書かれた作品からはリアリティもそうですし、学びという部分もありそうですよね。

そういった点に注目して改めて読んでみるのもおもしろいと思います。